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出会い・感動インタビュー

東 ちづるさん

「Get in touch」発足。―「Get in touch」をつくられた背景からお話ください。

私はずっと、さまざまな活動を一人でやっていくと周囲に公言していました。どの組織にも所属せずに、一人でいろいろな団体と仲良くしながら活動していくと いうことです。実際に全国各地で様々な活動を行ってきました。しかし、2011年に東日本大震災が起こり、「もう、自分ひとりじゃ間に合わない」と考える ようになりました。たとえば、障がい者ご家族が避難所に入れない。あるいは、ご高齢の方が自死を選んでしまう。その他にも、性同一性障害の方や在日外国人の方々が、さらに追 いつめられてしまうなど。そうした現実を目の当たりにして、正しい知識や正しい理解よりも大切なことがある。もちろん知識はあった方がいいのでしょうけれ ども、そうしたことは当事者にならないと心の底から理解することは難しいということです。 あの避難所で、「皆さん正しい知識を持ってください。つながってください」というのは少し違うなと思います。それは有事の時にだけ声を出すのではなくて、 日頃からマイノリティを排除しない社会の構築が必要なのです。そうでなければ誰もが安心して暮らせません。それまで長い間、社会活動をしていて、ずっとモヤモヤした違和感のようなものを感じていたこと、「病気になって慌てる。有事になって慌てる…」。それでは、そのときでは、まったく遅すぎるのです。

―「Get in touch」はどんなことを目指しているのでしょうか?

東日本大震災後、「支え合おう、つながろう、絆を大切にしよう」的な言葉がマスコミにもたくさん登場しました。けれども、現実は難しいです。有事の時、当 事者は自分のことだけでも必死です。家族さえも守り切れない場合もあります。だからこそ、常日頃から「違いをハンディにしない、まぜこぜの世界」をつくら なければということに気づいたのです。
その結果、立ち上げたのが、「一般社団法人Get in touch」です。いわゆる講演やシンポジウム、デモなどに参加する人たちというのは、社会に対して意識の高い人たちです。私はそうしたことに参加しない 人々、選挙にも行かないような人々をどう巻き込むか、そこに何よりも重点を置きたいと思いました。
「Get in touch」は主に、楽しい、ワクワク、ウキウキする空間、時間、人間関係をつくるイベントを開催しています。アート、音楽、ファッション、おいしいも の、といったものを通じて、もっと自然に気楽に自由に、いろんな人が一緒にいることが当たり前の世の中にしたい。価値観や文化、国籍、年齢、性別、いろん な違いを超えてまぜこぜで暮らしていける。「Get in touch」は、そんな世界を目指しています。私一人の夢だと、「そんなの妄想だよ」と言われるかもしれません。でも、みんなでつながれば、それは必ず現 実になる。わたしはそう信じています。

―「Get in touch」の構成メンバーを教えてください。

東 ちづるさん

「Get in touch」のメンバーは7名、参加してくれるクリエーターが60~70名。協力してくださるボランティアは200~300名に集まっています。基本的に 全国の施設や学園を訪れるのではなく都会に出てきてもらうというスタンスで活動しています。提供するのはハートフルな人間関係、ワクワクする時間と空間。 まさにいろんな人がいる、まぜこぜの世界です。
その原点は、あの大震災の避難所です。あそこは、まさに日本の縮図だったんですね。そこには老若男女の枠を超えた、普段街に出ない人たち、出たくても出られない人たちがいたのです。車椅子を使う人たちも、想像している以上に多いことに気づかされました。
普通、コンサートをはじめとするイベントを開催すると、集まってくるのはいわゆる健常者の方ばかりです。私たちは「いろんな障害のある人たちや生きづらさ を抱えた人たちも参加するイベントを開催するのでお越しください!」と声をかけます。そこで、イベントに参加した人たちは、世の中には色とりどりの人、違 う人がいるんだなということに気づくことができる。違いをハンディではなく、アドバンテージにすることができる社会、誰も排除しない社会を目指していま す。

―特に、アート活動や音楽活動に力を注いでいると聞きました。

東 ちづるさん

アート活動としては、いわゆる美術・芸術の専門教育を受けていない人たちのアート作品=アール・ブリュット(Art Brut)の展覧会を行っています。アウトサイダー・アート、エイブル・アート、ボーダレス・アートとも呼ばれています。欧米では高評価を得ている作品で も、日本はまだまだです。
音楽活動としては「Get in touch」のテーマ曲を作りレコーディングを行い、PVも制作しました。演奏はサルサガムテープという究極のバリアフリー・ロック・バンドです。リー ダーは、NHK「おかあさんといっしょ」5代目歌のお兄さん・かしわ哲さん。ドラムスは、THE BLUE HEARTSのメンバーだった「梶くん」こと梶原徹也さん、アレンジやキーボードは、ゴダイゴのミッキー吉野さんです。車椅子や自閉症の知的マイノリティのメンバーもいます。私も参加してとにかく楽しいライブを行います。制作したPVは全世界に発信し、紅白歌合戦出場を目指して活動しています(笑)。
PVにはあのアメリカの男性だけのパロディバレエ団・モンテカルロバレエ団も出演してくれました。私が彼らの公演を観た後、楽屋に行き話をしたところ、団長が「それで、僕たちは何をすればいい?」と言ってくださりびっくり。その2日後のわずか20分だけというピンポイントの撮影でしたが、世界的に活躍する彼らの協力に心から感謝しています。
とにかく、私もメンバーも自分ができることに尽力し、いろんな方々の協力で成り立っています。ある知り合いの方から「走行しながら組み立てているF1マシ ンのようだ!」と言われましたが、まさに言い当て妙。そんな感じで「Get in touch」は、今日も全力で走り続けています。
ージにすることができる社会、誰も排除しない社会を目指していま す。

パートナーの闘病のお話。―ご主人が難病を患っているとお聞きしました。

東 ちづるさん

夫は5年ほど前に「ジストニア痙性斜頸」という難病を発症しました。身体が思うように動かせなくなってしまい、一時は本当に大変でした。現在もまだ歩行す るまでには至っていませんが、車の運転ができるまでに回復しています。運転する姿を事情を知らない人が見たら、一体どこが病気なのと思われるかもしれませ ん。
正直、よくここまで回復したなと思います。本人はもちろん必死ですが、周囲のお世話になったいろんな方々のおかげです。担当のお医者さんも驚いています。
しかし、発病から2年間は病名すら分からなかったのです。その一方で病状はどんどん悪化していきました。悪化して再び病院を訪ねても、何も分からないまま。処方してくれる薬を飲んで、さらに悪化するという悪循環に陥っていました。
当然、夫は「僕治るのかな?」と聞いてきます。それも1日に何度も何度も。私が「治るに決まっているじゃない」と言うと、「なんで?」と。「治るって言ったら、絶対に治るからね!」。そんな言葉の繰り返しでした。ただ呪文のように「治る、治る」と言い続け、「じゃあ、私は誰に尋ねればいいの?」という状況でした。正直、つらかったですね。

―東さんは、ご主人の闘病をどう支えたのですか。

ものすごく大変だったけれども、私は絶対にあきらめないと決めていました。そう思えたのはこれまでの骨髄バンクでの活動や大震災の活動経験があったからに ほかなりません。いろんな患者さん、ご家族と出会って、数えきれないほどの方たちを看取ってきました。もちろん、元気になられた方も大勢いらっしゃいま す。人生は何が起きるか分からないものです。病気なるかもしれないし、事故や事件に巻き込まれるかもしれない。
けれども、自分の夫が病名が分からない難病になる覚悟はありませんでした。これまでの経験から彼が次に言うであろう言葉は、「なんで僕がこんな目に遭うのだろう?」だと思っていました。ある日、夫はその言葉を口にしました。私は「あっ、キタ!」と思い、こう答えました。「それは、今あなたが問うことじゃな い」と。「私たちが、どう生きていきますかって問われているんだよ」と。これは哲学の世界?(笑)。夫も途中から「これは修行だと思うようにした」と言い 始め、私も「そうだね、修行だね」と微笑みながら返事をしました。
20年以上にわたる社会活動の中で、私も失敗をして人を傷つけたり、反対に自分が傷ついたこともありました。そうした経験があったから、夫が病気なった時に、もちろんすごく驚いたけれども、慌てることはなかったと思っています。「セカンドオピニオン、サードオピニオン行くよ」、「人間のチカラ、自然の治癒 力を信じてるから」など、常に前向きな言葉をかけることができました。そうした経験がなかったら、二人で抱き合ってただ泣き続けていただけかもしれません。全国各地の難病の患者さん、そしてそのご家族の皆さんとの出会いがあったからだと思います。

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