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出会い・感動インタビュー

民間による宇宙時代―宇宙開発に関する、日本と欧米の違いについてお聞きしたいのですが。

いちばんの違いは、日本が国家事業として宇宙開発を進めていることです。もともとはアメリカも他の宇宙先進国もそうだったのですが、現在は次のステージへ入っています。ところが、日本では既得権益がものすごく強く、民間企業が参入しづらい状況にあります。
宇宙飛行士の例が分かりやすいかも知れません。日本の場合、未だに宇宙飛行士はヒーローでなくてはならないのです。学歴もすごくて、英語が堪能で、有能な スキルを持ち、子供たちに夢を与えられるスーパーマンのような人物。書類選考から始まって、いくつもの試験をくぐり抜けた人だけが宇宙飛行士になれるので す。
しかし、アメリカは違います。学歴などは関係なくて、重要なのはいままで何をやってきたかということ。筆記試験もなく面接だけで終了します。宇宙飛行士に 求められるのは、即戦力なのです。たとえば宇宙ステーションの修理を専門に行うことがメインの仕事ならば、東大卒の先生よりも、自動車の修理工場で働いて いた有能なスペシャリストのほうが適任者となります。日本人が考えているよりも、宇宙飛行士のハードルは高くないのです。
もちろん、アメリカもアポロの時代には、ヒーローとしての宇宙飛行士を求めており、そのため当時は軍人がなるケースが多かったことも事実です。でも、いまは転職のキャリアパスのひとつになり、宇宙には誰でも行けることが当たり前の時代になっているのです。

―山崎さんご自身も、すでに宇宙飛行に申し込んでいるとお聞きしました。

アメリカでは、すでにスペースシャトルの時代が終了し、民間による宇宙開発の時代が始まっています。宇宙開発を行う民間会社が、どんどん設立されていま す。国家が行うのは火星探査などの高度な技術が必要で予算もかかる部分に特化して、地球の周回軌道上などの宇宙空間は民間に開放される時代に入っているの です。
そうした状況を受けて、私の会社では宇宙に行きたいと思っている方をプロデュースしたり、宇宙に興味を持っている方たちとコラボレーションして、多様な宇 宙産業を立ち上げていきたいと考えています。しかし、そのリーダーである私が宇宙に行ったことがないのに、「宇宙は素晴らしいですよ!」と言ってみても まったく説得力がありません。そこで、すでに私もヴァージンギャラクティック社の宇宙船による宇宙飛行に申し込んでいます。
この申し込みに際して、私はリチャード・ブランソン社長に直接会うためにイギリスへ向かいました。それも、実はアポなしでした。朝から何度もアタックした のですが、もの凄い有名人なのでなかなかゆっくりと話をすることはできません。ようやく、その日の夜のパーティーでお会いできました。いろいろと話をした 結果、なんとリチャード自身が保証人になってくれて、無事に宇宙飛行の契約書にサインをすることができました。早ければ、来年にも宇宙飛行を体験すること になりそうです。高校に宇宙を学ぶコースを実現。

―現在、宇宙に関する新たな教育機関を設置したとお聞きしました。

いま日本には、宇宙を学ぶための教育機関は大学しかありません。私が勉強をした航空宇宙工学などもそうですが、いわゆる工学系の勉強のみです。ロケットや 人工衛星を作る、そのための実験や研究を行う…。そうした人材が必要かつ重要なことは当然ですが、一般人が宇宙船をどう利用するとか、宇宙と産業をどう結 び付けるかという発想を学ぶことはできません。
インターネットのことを考えてみてください。インターネットは、もともと軍事設備であり、理系の人間が生み出したものですが、いまは誰もが生活に不可欠な インフラとして気軽に使いこなしています。GPSも同じです。宇宙飛行や宇宙輸送手段についてもまったく同じで、これからは確実にあらゆる人が使えるイン フラになっていくでしょう。つまり、宇宙でのビジネスを考えられる人材の養成が絶対に必要なのです。
そう私が言うと、多くの方が大学に宇宙関連の学科を設置すればいいと思いがちです。しかし、大学ではだめなのです。すぐに「就職はどうなるのか」という意見が出たり、保守的な固定概念を打ち破ることが非常に難しいのです。
そこでいろいろと考えた結果、もっと若い自由な発想を持った人たち=高校生に目を向けました。つまり、高校に宇宙コースを設置するということです。ある人から通信制の高校なら、宇宙コースも可能だということをお聞きして、すぐに行動に移しました。

―具体的に、その宇宙コースはどこの高校に設置されているのでしょうか?

母体は茨城県にある鹿島学園で、その通信制課程です。スクーリングを行うキャンパスは全国の各都市にあり、生徒たちは全国から集まってきます。
それぞれの地域に合ったコース、たとえば農業地域だったら農業コース、秋葉原だったらアニメや声優のコースなどがあるのが特徴です。この学校に新たに宇宙 コースを設置しました。コースの開校は今年2013年4月です。コースの中にはさらに民間の宇宙飛行士を養成するためのコースと、民間の宇宙ビジネスを学 ぶコースが置かれています。
生徒たちにはまず1年間、集中して宇宙ビジネスを勉強してもらいます。そのビジネスプランを発表する場として、シンガポールへ連れていきます。そして、シ ンガポールから発着している豪華客船に乗せて、洋上プレゼンテーションを行います。これは相当、生徒たちの経験値が跳ね上がるはずです。普通の高校生には なかなかできない体験ですから。でも、それぐらいの思考で始めないと、宇宙ビジネスには到達できないと私は考えています。
もう一つは無重力体験です。無重力フライトのできる飛行機に乗せて、重力のない世界を体験してもらいます(これに関しては、私自身もすでに体験済み)。私 たちは生まれてから死ぬまで、ずっと地球の重力を感じ続けています。その重力から解放されることを、身体で感じ取る。自分の知らない世界があることを、理 論ではなく身体で実感できるのです。そしてその体験を元に、高校生たちにさらなる宇宙ビジネスを考えてもらおうと思っています。
そしてできればその高校を卒業する前に、1度は宇宙飛行までできるようにしたいと思っています。

自分の心の中に限界をつくらない。―無重力体験は、その先の宇宙を意識させる体験だということでしょうか?

私は無重力を体験するのは、若いほうがいいと思っています。大人よりも感受性が強く、適応能力も高いからです。大人になればなるほど固定概念にとらわれ、 無重力になったときの反応が違ってきます。ひとことでは言えませんが、世の中には自分が想像していなかったいろんなことがあることを客観的に理解できると いうか、物事を受け入れる器=意識の幅が確実に広がると思います。
以前、私は不登校の中学生を無重力フライトに行かせました。その子は学校に行っても勉強もスポーツも得意ではなかった。家でも他の兄弟姉妹のような能力や 容姿がなく、すべての自信を無くしていました。ところが無重力を体験した途端、ガラッと変わったのです。友達も兄弟も先生ですらやったことのないことを、 自分だけができた喜び。これに勝るものはありません。
おかげでそれまでのマイナス思考の意識が変わり、学校へも通えるようになりました。学校では友達から「スゴイなあ。無重力どうだった?」と聞かれます。人 と違ったことをすると、それ自体がかけがえのない取り柄になるということを証明した出来事でした。彼はその後、無人島ツアーに自ら参加し、さらに世界一周 のクルーズにも行こうとしています。もの凄いアクティブな人格に変わったのです。
私は、東日本大震災で家族を失ってしまった子供たちも、無重力体験に連れて行ってあげたいと考えています。悲しみのために笑顔をなくし、失語症になってし まった子供たちに無重力体験や宇宙旅行の話をしたら、急に元気になったということが起こったのです。NPOの人たちも驚いたほどで、これはぜひ実現したい と思います。

―宇宙での事業を拡大する山崎さんの、今後のビジョンをお聞かせください?

私はいま、同時に35個の事業を進行させています。体は一つしかないので、思うように進まずに歯がゆい思いもしつつ、何よりも時間が足りないことを逆に幸 せなことであると実感しています。最終的には、私とコラボレーションできる人を1,000人見つけて、そのための会社を立ち上げて、1,000社のグルー プ会社を作ろうと思っています。
その第一弾が、通信制高校の宇宙コースなのです。たとえば1学年に生徒が100人いるとして、10年経てば1,000人の卒業生を輩出することができま す。10年がかりにはなりますが、宇宙ビジネスを仕事にできる1,000人の社長たちとコラボレーションしていくことが可能になります。これまでのような 既得権益には絶対に潰されない強力なネットワークができあがるはずです。考えるだけでも、いまからドキドキ・ワクワクしてきます。
私が言いたいことは、「宇宙に限界はない。宇宙ではすべてやったもの勝ち!」ということに尽きます。前例とか固定概念などの中に浸っていると、もちろんそ れは実現不可能なことです。ですから、自分の心の中に自分で限界を作らないでほしいと思います。宇宙飛行士でなくても宇宙に行ける時代は、もうそこまで来 ているのです。旅行で宇宙に行く人がいる、宇宙空間で仕事をする人がいる。そこは無限の可能性に満ちています。自由な発想でチャレンジできる。私はそうい う仲間がどんどん増えてほしいと心から願っています。

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