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出会い・感動インタビュー

―ピンチこそ、ドラマのクライマックスに

中村 政嗣さん

僕は10代で社会人になって、20代で結婚。無我夢中の30代、40代を経て今は60代だけど、振り返ればどの年代も幸せだったと思える。会社が倒産寸前 なんてときもあったけど、大変なときは振り返る余裕すらないですから。それをクリアして初めてよかったな、と感じることも多い。ただひとつ、いつも決めていたのは、絶対に逃げないことです。

よく、ピンチはチャンスなんて言葉を聞きますが、僕に言わせればピンチはピンチですよ。本当のピンチに直面している最中に、ピンチはチャンスだなんてとて も思えないはず。でもね、ちょっと映画のことを考えてみてください。最高のクライマックスはたいがい、主人公がピンチの場面でしょう。そんな場面で、主人公や周りの人たちが文句ばかり、愚痴ばかり、ぼやいてばかりの映画なんて面白いですか?
ピンチのときこそ必死になってがんばり続ければ、切り抜けた暁には、体験したことのすべてがすばらしいドラマとして残るんです。それに一所懸命生きている と、周囲の人から思いがけない後押しや援護を受けることもよくあります。ピンチがドラマを、そして出会いをつくってくれるんですね。

こんなこともありました。ある店長から、ひどい怠け者をクビにしたいという申し出があって、僕が本人と直接話をしてみることになったんです。当然、その子は怒られると思って固まっていたんでしょうけど、僕は「おまえ、すごいな。正直やね」と切り出しました。
実際、正直は本当に大切なことです。ありのままに振る舞うことができる彼はすばらしい。だけど僕らの仕事は、いくら頭が痛かったり、面白くないことが あっても、目の前のお客さんには常にベストの状態で接しなければならない。つまり、時にはちょっとウソをつかないといけない仕事なんです。無人島で一人きりで暮らすのならともかく、お客様に喜んでいただくための仕事ですから、自分の気持ちやコンディションに正直なだけでは成り立たない。やはり「ちょっとのウソ」が必要なんです。
「おまえだって最初はできてたやん。けど、最近は少々ありのまま過ぎるかもしれんな。どや、ちょっとだけウソつくよう、またがんばってみんか。仰山がんばるんやない、ちょっとだけでいいんや」。するとその子はニコッと笑ったから、もう大丈夫だと思った。それからは元気に働き続けていますよ。

僕は相手が誰であれ、必ずその人を認めることから入るようにしている。大事なのは絶対に否定しないで、受け入れること。そうすると、相手が自分を見る目が 変わるんです。そしてお互いに素直になれる。素直になれると自然に、ありがとうの気持ちが生まれます。ありがとうが生みだす感動や感激で、また素直になれる。そんな繰り返しで人は成長していくんだと思います。

―当たり前じゃないから「ありがとう」

中村 政嗣さん

僕の人生、ありがとうの連続ですね。それは、人にも物にもありがとうをいうから。ありがとうって、いつでも何にでもつかえる素晴らしい言葉だと思いますよ。そして、すごく謙虚な表現でもある。「ありがとう」の反対語って、なんだか分かりますか?それは、「当たり前」。ありがとうは漢字で書けば「有り難う」、なかなかないこと、という意味ですからね。別の見方をすれば、難のない人生は「無難」なだけ、難のある人生こそが「有り難い」人生だとも言えます。
たとえば自分の生活や仕事、環境などの状況を考えてみて下さい。それを当然のことと思うか、「有り難い」ことだと思うかで、全く違う見え方になるはず。周囲の物事を当たり前と受け止めるのをやめてみれば、感謝の気持ちが自然にわいてきて、素直にありがとうが言えるようになります。

中村 政嗣さん

そして、ありがとうの最高の良さは、連鎖すること。たとえば電車で席を譲るという場面で出る「ありがとう」には、感謝とともに「また、他の人にも譲って下 さいね」という願いも同時に込められているんです。それを聞いた相手は、譲ってよかった、次も譲ろうという気持ちになる。ありがとうによって人がつながり、思いの輪が広がっていく。だから、まず最初の一言を自分が発することが、ありがとうの連鎖を生みだすんです。もちろんやたらめったら口に出せばいいってものじゃない。本来は、本当に心の底から感じた時に出るべきものだから。自然に出るのが一番いいけど、最初は意識して言い続けるのもいいと思いますね。意識してかたちに表すうちに、次第に心が伴ってきて、きっと自然な「ありがとう」になっていくことでしょう。

うれしい言葉でしょ、「ありがとう」って。いった人もいわれた人も、そばで聞いていた人も、みんないい気持 ちになれる。人はうれしいと、自然と笑顔になる。笑顔でいれば元気になれる。元気は希望を生みだす、という風に素敵なサイクルが循環していくんですよ。たった一言の「ありがとう」を出発点に、人は変わることができる。どうです?まさに一番簡単な魔法の言葉じゃないですか!

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